ラストキング・オブ・スコットランド

ラストキング・オブ・スコットランド

 軽い気持ちでアフリカのウガンダに赴いた若きスコットランド人医師・ニコラス(ジェームズ・マカヴォイ)。彼がそこで出会ったのは想像を絶する衝撃的な存在だった――。

 1970年代の絶対的君主統制下のウガンダを舞台に侍医として独裁者に近づき過ぎてしまった主人公に迫りくる恐怖を描いた物語。『ブラック・セプテンバー/五輪テロの真実』でアカデミー賞ドキュメンタリー部門賞を受賞したケヴィン・マクドナルド監督がドキュメンタリータッチで実在した独裁者アミンの姿を描き出す。

【コメント】1970年代のウガンダで、独裁者と君臨したアミン大統領。その恐るべき素顔を、スコットランドから来た青年医師ニコラスの目を通して描く。

 一見、国民に理解をみせるリーダーという顔をしながらも、自分を裏切った者は容赦なく殺害。その反面、切羽詰まると自分の判断に自信が持てなくなり混乱するなど、“人間”としてのアミンのもろさまで、フォレスト・ウィテカーが名演技を披露し、第79回アカデミー賞主演男優賞に輝いた。ウィテカーの瞳の奥に潜む狂気に注目しながら観れば、受賞も納得できるというもの。

アミンの独裁者ぶりを伝えつつも、ニコラスの運命がドラマチックな本作。アミンに気に入られたばかりに、祖国へ帰れない苦悩。

 さらにアミンの第2夫人と不倫関係に陥ってしまうことで、その事実を隠そうとする緊迫の攻防…。クライマックスでニコラスを襲う試練は、あまりにもショッキングな映像で描かれ、正視ができないほどだ。リアルなディテールの蓄積でアフリカと欧米の関係を考えさせられつつ、主人公ふたりによって、支配する者、支配される者という普遍的な関係を見据えた点に、本作の成功の理由がある気がする。(斉藤博昭)

2007年3月10日より有楽町スバル座ほかにて公開

cinemacafe.net - 2007/3/3