スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師

スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師
監督 ティム・バートン、原作 スティーヴン・ソンドハイム、ヒュー・ウィーラー
キャスト チャールズ・S・ダットン、イザイア・ワシントン、ビル・ハーパー、アンドレ・ブラウアー、オシー・デイヴィス
19世紀のロンドンにある理髪店の店主のベンジャミン・パーカーは判事のターピンに妻を横恋慕されてしまって、無実の罪で追放されてしまうのだ。15年後牢を抜け出してロンドンへ戻ったベンジャミンはスウィーニー・トッドと名乗り、ターピンへの復讐を果たすべく準備を進めるのだが…。
ブロードウェイのヒット・ミュージカルをティム・バートンがムービー化したミュージカル・ホラーだ。
ティム・バートンとジョニー・デップといえば、「シザーハンズ」に始まり、「エド・ウッド」「スリーピー・ホロウ」「チャーリーとチョコレート工場」と次々と作品を送り出している盟友なのである。そのふたりが今度はブロードウェイミュージカルを元にミュージカルムービーを作ったのだが、ティム・バートンは、いわゆるミュージカルムービーのノー天気さとは無縁の、グロテスクなおどろおどろしい復讐劇なのだ。
作品自体は非常によくできていて、ほとんどがモノクロに見える薄暗いようなロンドンの街を舞台にしていて、復讐心に燃えるスウィーニー・トッドが次々と人を殺していくというわかりやすいストーリーなのだ。そのスウィーニーの床屋の階下でパイを売るレストランを出しているミセス・ラベットはそのスウィーニーに惚れていて、とことんまで彼に協力する。霧にかすみ、すすに汚れた街で暮らす人々はみんな薄汚れてしまっている、その世界観を完全なものにするというのだが。
果たして19世紀のロンドンがこのようだったのかはわからないが、100年以上前のこことなので、衛生の観念もまったく違っていて当たり前ただろうし、人々の生活の仕方もまったく違っているのは当然ただろうから、この世界には説得力があるようなできごとだ。この世界像の構築のうまさがティム・バートンの魅力だ。「チャーリーとチョコレート工場」ではありえないようなファンタジックな世界を見事に作り上げたのだが、ありえないようなおどろおどろしい世界を見事に作り上げてしまっている。チャーリーとチョコレート工場の作品は正反対のようでよく似た作品だ。ティム・バートンの作品がありえなさとリアリティを併せ持つのは、それが常に人間の内面を描いているからなのかもしれないのだ。誰でももっているチャイルドなマインドや誰でも持っている残忍なマインドが誇張されムービー化したときに表れる世界なのだ、それがティム・バートンのムービーなのだろう。