全然大丈夫

全然大丈夫
2007年の日本映画で110分

監督脚本 藤田容介
キャスト 荒川良々、木村佳乃、岡田義徳、田中直樹、きたろう、伊勢志摩、村杉蝉之介、蟹江敬三

植木の職人の見習いをしている照男はホラーが大好き人間で、実家の古本屋で幼馴染の久信と友達を脅かしたりして遊んでいる。久信は清掃会社に勤めるまじめなサラリーマンなのだが、その清掃会社の求人にあかりという女性が応募してくるのだが…という設定でストーリーが展開させて行く。
独特のキャラクターで存在感を見せつける荒川良々の長編映画の初主演作なのだ。藤田容介監督は大人計画などの舞台で映像を作っているので、長編映画としてはこれが事実上の商業映画でのデビュー作となるのである。
全体を見てみると、映画のコピーにもあるようにほのぼのとした脱力系のあふれたコメディタッチの映画である。それに大きく寄与しているのがなんといっても主演の荒川良々のキャラクターなんだが、その脇に配した木村佳乃と岡田義徳もほのぼのとした世界にうまく溶け込んでいてくれているので、キャスティングは絶妙の雰囲気なのだ。笑いどころがたくさんあるのだが、過激さもあんまりなく、下ネタもなく、本当にほのぼのと笑うことを望んでいる人には向いている。基本的には下らないどうでもいいギャグで「鼻くそ」とか子供しか受けないが笑いそうなネタが多少多いのだけれども、単純なそういうギャグはやはり気張らずに面白いし、ばかばかしいと思わせないような工夫と構成があってすばらしいと思える。この作品の本当に面白いのは、まずはどうでもいいことへのとんでもないこだわりにあるようだ。好きなのは荒川良々が演じている照男の服だ。彼はセーターやトレーナーをいつも着ているのだが、そこに書いてあるのは"MIZZOU"や"☆RYU☆"といったまったくわけのわからない言葉なのだ、これを作ったにしろ探して来たにしろ相当な手間がかか
るはずだ。
映画のストーリーとはまったく何の関係もないので、映画の中で触れられることもまったくなく、単なる小道具としてしか現れない。それは照男の部屋においてあるフィギュアにもいえるのだ。照男の人物像を作り上げるのと、ちょっとしたギャグのために相当に手の込んだフィギュアをいくつも作っているのだ。そのあたりのこだわりが本当に面白いと感じられるだろうか。この映画は好きな人は何度も繰り返して見れば、どんどん笑うべきところが増えていく作品だと思う。ホームレスのアーティストが作るオブジェも、古本屋の品揃えも、きっとかなりのこだわりがあったのであろうと思っているのだが、じっくり見ればそこにまた笑いがあるのだ。父親からの葉書も面白かったし、歌も噴飯ものだった。思い返しても笑えてしまえるギャグがちりばめられているので、コメディ映画というよりはギャグ映画というべきなのかもしれないのだ。